開発商品

 

   
 

グリッドなしで深度スライスイメージ
を作成する

 

使用機器:Noggin500MHzアンテナ スマートカートシステム

   
 

多くのGPRユーザーにとってグリッドを設置する作業はあまり気の進むものではないようです。時間もかかるし、簡単ではないからです。
Sensors & Software では、20年以上に渡ってグリッドを利用したデータ収集をおすすめしてきました。探査エリアを正確に測定したデータが得られ、結果としてより正確な地下のイメージが得られ、それゆえ解析もよりしやすくなるからです。

GPRデータのほとんどは、深度スライスか3Dボクセル立方体での表示形式になります。しかし多くのユーザーにとって、グリッドを設置して、それに沿ってデータを収集するという作業は、気が進まないものです。

グリッドが有効な理由として、探査エリアをすべて網羅することができ、データの正確な位置情報が得られ、すべてのトレースに一定の方向性をもたせて、空間的でシステマチックなデータ処理ができることがあげられます。
グリッドを使用することで、整然としたデータを収集することができ、正確な深度スライスや3Dキューブを表示させることができます。

しかし他にももっと簡単に、データを収集し、すべてのトレースの位置情報を把握できる方法はないものでしょうか?答えはYesです。
位置情報を把握するための技術は、レーザーセオドライトやIMU(慣性計測装置)などたくさんありますが、一番よく知られているのはGPSでしょう。
GPSは世界中どこでも手に入り、Sensors & Softwareの地中レーダ探査システムにも簡単に接続できます。しかし、地中レーダ探査に用いるGPSは、車やスマートフォンについているGPSよりもより正確なものでなくてはなりません。もちろんそうなると価格も高くなります。

もっとも正確なGPSはRTK (リアルタイムキネマチック)GPSです。
これは、2つのGPSを使う方法です。一つはレーダーシステムと一緒に移動し、もう一つは固定した位置に置き、移動しているGPSと通信しながら、より高精度な位置情報を獲得するもので、移動用GPS単独で行うよりもずっと正確です。ほとんどの場合、誤差は0.5m以下です。

しかしRTK GPSが必ずしも必要というわけではありません。手ごろな価格のディファレンシャルGPS(DGPS)でも、スムーズアルゴリズムやWAAS (Wide Area Aumentation System) のような衛星ベースの位置修正機能を内蔵しており、これにより差異を減らし、GPS(米国)とGLONASS(ロシア)の両方の衛星測位システムにアクセスします。このようなGPSは、深度スライスを構築するために必要な正確な位置情報を提供してくれます。
実際、図3のデータはそのようなGPS(TopconSGR-1)を使って収集したものです。

GPSを併用してGPRデータを収集するときは、グリッドを設定する必要はありません。芝刈り機で芝を刈るのと同じ要領で、探査エリアを一定のパターンで歩き回ればいいのです。ただし、探査エリアが全てカバーされている必要があります。
位置情報はGPSに任せる一方で、探査すべきエリアのデータが全て収集されているかに集中しなくてはなりません。

 

 

図1:縦横方向ライン(a)とその深度スライス(c)、 らせん状ライン(b)とその深度スライス(d)

EKKO ProjectV5ソフトウェアのスライスビューモジュールに新機能が追加されました。収集したラインデータに位置情報を付加させて深度スライスを作成する機能です。
例えば、2つのシングルラインデータを2通りの方法でゴルフ場で収集しました。(図1)
Line1は縦横方向に往復するやり方で(図1a)、Line2は中心からスタートしてらせん状に外に向かって進むやり方(図1b)です。

グリッドデータのスライスビューと同様、GPSを利用したラインデータのスライスビューも、深度スライス作成前に、図2が示すいくつかのパラメーターを設定する必要があります。(図2)
Advancedを選択すると、ユーザーは値を入力することができます。この画面ではほとんどのパラメーターはデフォルトになっていますが、深度スライスビューに重要なパラメーターとして、探査エリアでのGPR速度があります。


図2:GPSベース深度スライスパラメーター

もし可能なら、hyperbola-fitting機能を使い、GPR速度を指定することが望まれます。Migrationの過程で、”Velocity”の項目にその値を入力します。もしできなければデフォルトの0.10m/nsを使います。

もう一つ、深度スライスビューに重要な設定値に、”Interpolation distance"があります。通常この値は、探査エリアにおける隣り合う探査ライン間隔の平均値が設定されます。
グリッドを利用したデータ収集と同様、この隣り合う探査ライン間隔が狭くなればなるほど、最終的なイメージ図はより正確なものとなります。
図1のライン間隔平均値は約1mです。図1のそれぞれの探査ラインにより得られた深度スライスイメージは、それぞれその下の図1cと1dになります。
このイメージ図で樹木状にあらわれているのがゴルフ場グリーンの地下にある排水管です。

GPSを併用してデータを収集する方法は、グリッドを設置するのが苦手なユーザーの皆様に好評です。RTK GPSやレーザーセオドライトのような、正確な位置情報を得られる製品でも、近年では価格が安くなっています。グリッドを使用しない探査も増えていくと思われます。
GPRでのデータ収集が簡単になるということは、ユーザーにとってはフィールドに費やす時間が短くなるということであり、非破壊探査がより手頃な価格で行え、より多くのチャレンジが容易になるということです。それにより図3にあるような探査も増えてくると予測しています。


図3a:30x60m GPSによるグリッドなしの探査
(ライン長7,000m,所要時間5時間)


図3:上図aのラインの深度スライスパターン1


図3:上図aのラインの深度スライスパターン2

   

 

 

Sensors&Softwareロゴ